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成年後見制度と遺産分割:相続手続きの専門家が解説する注意点と対応策

成年後見制度と遺産分割:相続手続きの専門家が解説する注意点と対応策

2025.06.10

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相続が発生した際、相続人の中に成年後見制度を利用している方がいる場合、通常の遺産分割とは異なる注意が必要になります。本記事では、成年後見人が関与する遺産分割の流れと、相続における注意点について、税理士の視点からわかりやすく解説します。

成年後見制度と相続手続きの関係

遺産分割は、複数の相続人が財産を分け合う重要な手続きです。通常は相続人全員による遺産分割協議を行い、その合意内容を協議書にまとめます。しかし、相続人の中に認知症などで判断能力が不十分な方がいて、家庭裁判所により成年後見人が選任されている場合、その方自身が協議に参加することはできません。

成年後見人は、本人の代理人として財産に関する法律行為を行うことができるため、遺産分割協議にも本人の代わりに参加します。その際、成年後見人には、本人の利益を最優先に考え、法定相続分を確保するよう配慮する義務があります。

成年後見人が関与する遺産分割の流れ

  1. 相続人の確定と財産の調査
  2. 遺産分割協議の開始
    o 成年後見人が本人の代理として協議に参加
  3. 遺産分割協議書の作成
    o 成年後見人が本人の代理で署名・押印
  4. 遺産の名義変更や登記手続き等を実施

税理士としては、この過程において財産評価や税務リスクの整理を行い、遺産分割による税務上の影響(例:相続税評価額、二次相続への備え)について助言する役割を担います。

注意すべき4つのポイント

① 利益相反の可能性に注意
成年後見人自身が他の相続人である場合や、利害関係が発生する場合は、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立てる必要があります。これにより、本人の利益が損なわれることなく、公平な遺産分割が可能になります。
② 成年後見人との連携を重視
後見人との意思疎通が不足すると、協議が長期化・複雑化する恐れがあります。相続財産の説明は丁寧に行い、書面での共有を心がけましょう。必要に応じて税理士や弁護士といった専門家を交えた対応が有効です。
③ 調停・審判への備え
協議が整わない場合は、家庭裁判所の調停や審判へ進む可能性があります。成年後見人は引き続き代理人として関与し、裁判所の判断に従って遺産分割が進められます。
④ 居住用不動産の処分には注意
本人が居住していた不動産を遺産分割の対象として売却・処分する場合、家庭裁判所の許可が必要になります。税務上も、譲渡所得の計算や特例(居住用財産の3,000万円特別控除等)の適用可否について事前に確認しておくことが望ましいです。

税理士が提案する実務的対応

成年後見人が関与する相続案件では、法律的手続きだけでなく、税務面での配慮も欠かせません。たとえば、特定の不動産を配分した結果としての評価差額や、相続税の申告における納税資金の確保など、専門家の支援が必要になる場面が多くあります。

また、家庭裁判所とのやり取りや法的文書の作成も慎重に行う必要があるため、司法書士や弁護士と連携しながら進めるのが安心です。


まとめ

成年後見制度を利用している方が相続人に含まれる場合、遺産分割はより慎重な対応が求められます。税務面を含めた専門的な知識が必要となる場面も多いため、相続税の申告や財産評価を含め、税理士の関与が大きな支えとなります。

相続の準備や対応に不安を感じたら、早めに専門家にご相談ください。納得できる円満な相続の実現をお手伝いします。

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