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判断能力が低下する前に検討したい「成年後見制度」|相続・財産を守るための基礎知識

判断能力が低下する前に検討したい「成年後見制度」|相続・財産を守るための基礎知識

2025.06.17

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高齢化が加速する中で、相続対策と成年後見制度の重要性がますます高まっています。認知症などで判断能力が低下した後では、遺言書の作成や生前贈与といった生前対策が難しくなってしまうこともあります。今回は、税理士の視点から「成年後見制度」の基本と、相続トラブルを未然に防ぐための活用ポイントについて解説します。


年後見制度とは?|法定後見と任意後見の違い

成年後見制度は、認知症や知的障害などにより判断能力が不十分になった方の「財産管理」や「身上監護(介護や医療手続きの支援)」を法律的に支援する制度です。制度は大きく分けて以下の2種類があります:

  • 法定後見制度:判断能力が低下した後に、家庭裁判所が後見人を選任する制度。
  • 任意後見制度:本人が判断能力を有しているうちに、将来に備えて後見人となる人と契約を結ぶ制度。

特に任意後見制度は、将来の相続に向けた準備として活用されることがあり、税理士や司法書士との連携によって効果的に進めることができます。


判断能力低下が相続対策に与える影響とは?

遺言書の作成や生前贈与、信託の設計など、相続に関する意思決定には「本人の判断能力」が不可欠です。判断能力を欠いた状態で作成された遺言書は、後日その有効性が争われる可能性があり、相続トラブルに発展するリスクも否定できません。

成年後見制度を利用すれば、本人に代わって財産管理を行うことは可能ですが、相続対策そのもの(例:贈与や遺言書作成)を後見人が代わって行うことは原則としてできません。この点は、相続実務上でも誤解が多いため注意が必要です。


成年後見制度の活用事例|相続トラブルの予防に役立つケースとは?

以下のようなケースでは、成年後見制度の活用により財産の保護や円滑な相続につながる可能性があります:

  • 遺言の有効性が疑われるケース
     → 認知症の進行前に任意後見契約と公正証書遺言を準備することで、後日のトラブルを防げます。
  • 高齢の被相続人の財産管理が不透明な状態
     → 法定後見制度を利用し、家庭裁判所の監督下で後見人が適切に財産を管理することで、不当な出金や名義変更などのリスクを回避できます。
  • 将来的な施設入所や医療判断のサポート
     → 成年後見人が本人の生活支援を継続的に行うことで、安心した生活基盤を整えることができます。

成年後見制度の注意点|専門家のサポートが不可欠

成年後見制度は非常に有用な制度である一方、以下のような制限や留意点もあります:

  • 一度開始すると原則として途中で終了できない(法定後見)
  • 後見人による贈与や遺言作成などは原則として不可
  • 後見人の行為は家庭裁判所の監督を受けるため、柔軟性に欠けることがある

このように、成年後見制度は「財産を守る制度」であり、「相続対策を進める制度」ではないという本質を正しく理解しておく必要があります。

そのため、相続対策と後見制度の活用は、「税理士」や「司法書士」「弁護士」といった専門家のサポートを受けながら、判断能力が十分なうちに計画的に行うことが重要です。


まとめ|早めの対策が相続トラブルを防ぐカギ

成年後見制度は、高齢化社会における財産保全の重要な制度ですが、「万能な制度」ではありません。相続を見据えた生前対策は、本人の判断能力があるうちにこそ進めるべきです。

相続や財産管理について少しでも不安がある場合は、早めに税理士などの専門家にご相談ください。ご家族の安心と財産の安全を守るための第一歩として、制度の正しい理解と活用が欠かせません。

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