2025年9月現在、親の認知症や相続をめぐるトラブルは社会的な課題となっています。そこで注目を集めているのが 「民事信託」 です。本人が元気なうちに信頼できる家族と契約を結ぶことで、財産の管理や承継をスムーズに行うことができ、安心した将来設計につながります。ここでは、民事信託の基礎知識と活用のポイントを解説します。
民事信託の基礎知識:柔軟な資産管理を可能にする仕組み
民事信託とは、本人の判断能力が十分なうちに、信頼できる家族や親族に財産管理を任せる制度です。仕組みは以下の三者で構成されます。
- 委託者:財産を信託に出す人
- 受託者:信託財産を管理・運用する人
- 受益者:信託財産から生じる利益を受け取る人
特徴として、信託財産の名義を受託者に移す点があります。たとえば、親が所有する不動産の管理を子どもに任せ、その賃料収入を親が受け取るといった契約も可能です。
遺言が「相続開始後に効力を発揮する」のに対し、民事信託は「生前から柔軟に設計できる」のが大きな違いです。また、成年後見制度のような制約も少なく、個別の事情に合わせた設計が可能です。
なお、信託銀行などが営利目的で担う 商事信託 もあります。信頼できる家族が身近にいない場合や、収益性のある不動産を専門家に任せたい場合には、商事信託を利用することで資産管理の負担を軽減できます。
相続・認知症対策に役立つ民事信託の活用ポイント
民事信託を活用することで、次のような効果が期待できます。
- 本人の判断能力が低下しても、家族が財産管理を継続できるため 認知症対策に有効
- 障がいを持つ子どもの生活や財産管理を支援できる仕組みとして活用可能
- 受託者が亡くなった後の承継先を指定できるため 二次相続対策にも有効
- 事業承継において自社株を信託し、財産権と経営権を分離することで円滑な承継が実現できる
ただし、信託財産の種類や受託者・受益者の設定を誤ると、思わぬ課税や家族間のトラブルにつながることもあります。そのため、制度の仕組みを十分に理解し、専門家に相談しながら設計することが重要です。
まとめ:民事信託は「元気なうち」に準備するのが安心
民事信託は、相続や認知症への備えとして非常に有効な手段です。遺言や成年後見制度だけではカバーできない柔軟な設計ができるため、家族の将来を見据えた資産管理に役立ちます。
早めに制度を理解し、信頼できる家族や専門家とともに最適な仕組みをつくっておくことが、安心した相続対策につながります。
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