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誰が継ぐかで会社が揺れる?事業承継トラブルの落とし穴

誰が継ぐかで会社が揺れる?事業承継トラブルの落とし穴

2025.10.03

相続・事業承継

近年、経営者の高齢化に伴い、相続だけでなく事業承継の問題も社会課題化しています。特に中小企業では、承継時にトラブルが発生するケースが増加しており、早期の対策が不可欠です。本記事では、事業承継トラブルの事例や背景を整理し、未然に防ぐための具体的な対策を解説します。


親族間の対立や株式分散が引き金になる『争続』

中小企業の経営者が高齢化する中、事業承継を円滑に進める重要性はますます高まっています。
2023年に日本政策金融公庫が実施した中小企業向けの調査によると、後継者が決まっている企業でも、承継時に懸念される課題として以下が上位に挙げられました。

  • 後継者の経営能力
  • 相続税・贈与税の負担
  • 後継者による株式・事業用資産の買い取り

事業承継は、引き継ぎ先によって親族内承継と**親族外承継(M&Aなど)**に大別されます。それぞれに異なるトラブルリスクがあります。


親族内承継でのトラブル例

親族内承継では、経営者の資産相続をめぐる親族間の対立が発生することがあります。特に自社株の分散は、会社の意思決定に影響を与えることがあり、事業承継トラブルの原因になります。

事例
経営者が長男を後継者に指名していたが、自社株を長男に承継する前に死亡。遺産分割協議で長男は自社株の全取得を主張しましたが、別の会社に勤務する次男が反対。結果、株式は法定相続分に基づき均等に分割されました。そのため、長男は必要な議決権を確保できず、経営判断や事業運営に支障が生じました。


親族外承継(M&A)でのトラブル例

親族外承継では、契約条件が履行されないケースがあります。

事例
M&A契約で株式譲渡対価は低額とし、代わりに「一定期間後に退職慰労金を支払う」という条件を盛り込む。しかし期日を過ぎても支払われず、契約不履行に発展し、当事者間で紛争が発生しました。


揉めない事業承継を実現するための対策

事業承継トラブルを防ぐには、計画的な準備と早期対応が重要です。特に、中小企業の事業承継では以下の対策が有効です。

  1. 後継者候補を早期に明確化
    経営を任せられる後継者を早めに定め、関係者の合意形成を図る。従業員や取引先の理解を得やすく、後継者を支える体制づくりが可能です。
  2. 経営権と資産の分離
    自社株など経営資産は、生前贈与などで後継者に集中させ、意思決定を一元化。円滑な経営が実現しやすくなります。
  3. 定款整備や種類株式の活用
    無議決権株式や議決権制限株式を定款で定めることで、株式分散による経営混乱への備えが可能です。
  4. 専門家(税理士・司法書士・弁護士)の活用
    株式譲渡、税務申告、登記など専門的手続きが多数あるため、外部専門家の支援を受けることが有効です。
  5. 事業承継計画の早期作成
    計画策定過程で経営者と後継者が経営状況や課題を共有することで、引継ぎが円滑に進みます。
  6. 家族間の対話
    親族への説明や相続人の意向把握など、家族間でのコミュニケーションの積み重ねも重要です。

事業承継は**「経営のバトン」だけでなく、「家族の未来」を左右する重要なプロセス**です。トラブルの多くは準備不足や誤解、感情のすれ違いから生じます。大切な会社と家族の絆を守るため、今から後継者の方向性を明確にし、専門家を交えた多角的な対策を講じることが重要です。

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