混同防止が事業承継トラブル回避のカギ
中小企業では、会社名義の預金や車を社長個人のものと混同して使用するケースがあります。こうした混同は、税務リスクや将来の事業承継・相続トラブルの原因となることがあります。本記事では、法⼈資産と個人資産の混同によるリスクと、その具体的な対策を解説します。
法人資産と個人資産を混同していませんか?
中小企業では、会社の口座を社長が私的に使用したり、会社名義の車や不動産を社長や家族が私的に利用したりすることが散見されます。しかし、法律上法人と個人は別人格として扱われるため、資産を混同するとさまざまな問題が生じます。
税務リスク
- 会社の預金を私的に使用すると、税務署から役員賞与と認定され課税対象となる可能性があります。
- 役員賞与は原則として損金算入不可
- 法人の税負担増加+社長個人への所得税課税
- 会社名義の車や不動産を私的に使用している場合、経済的利益の供与として課税対象になる可能性があります。
- 帳簿への不記載や虚偽処理があれば、重加算税などの厳しいペナルティが課されることもあります。
相続・事業承継でのトラブル
会社資産と個人資産が混同されると、将来の相続や事業承継時に問題が生じます。
- 会社名義の不動産を社長が「自分の資産」と誤認し相続人に伝える
→ 相続手続き時に後継者や家族とのトラブルに発展する可能性
つまり、資産の混同は税金面だけでなく、家族や後継者との信頼関係にも悪影響を与えかねません。
事業承継・相続を見据えた整理と対策
資産混同の背景には、中小企業の社長がビジネスとプライベートを重ねて運用していることが多い点があります。そのため、日常的に法人と個人の財産の線引きがあいまいになりやすいのです。
具体的な整理方法
1.資産の棚卸し
- 「会社名義」と「個人名義」の資産をリスト化
- 現状を明確に把握する
2.私的利用の確認と是正
- 会社名義の自宅・車などを私的に使用している場合、適正な会計処理がされているか確認
- 必要に応じて修正処理(会社経費・賃料支払等)
3.事業承継・相続に備えたルール化
- 将来的な事業承継で後継者が正しく資産を引き継げる状態を整備
- 税務リスクや資産分割トラブルを未然に防ぐため、税理士や司法書士などの専門家に早めに相談
4.社長自身の再確認
- 「どこまでが自分の財産か」を明確化する
- 家族や後継者を守るための第一歩
日常の資産運用のあいまいさが、将来の税金や相続トラブルに直結することがあります。事業承継をスムーズに進めるためにも、法人資産と個人資産の区分整理とルール化は、早めに実施することが重要です。
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