相続税の負担を減らせる制度「小規模宅地等の特例」の基本
相続税が重くのしかかる原因として、土地等の評価額が高いことがあげられます。2025年11月時点では、被相続人の自宅や事業用地を相続する際に、一定の要件を満たせば、土地等の評価額を最大で80%減額できる制度として「小規模宅地等の特例」が注目されています。
この制度の対象は、相続または遺贈により取得した宅地などで、その土地が被相続人や生計を一にする親族の「居住用」「事業用」「貸付用」いずれかの用途に供されていたものであることが条件です。評価額が大幅に下がるため、相続税の負担を劇的に軽減できる可能性があります。
特例の適用対象とその区分
小規模宅地等の特例では、対象となる宅地の用途によって、次の4つの区分があります:
- 特定居住用宅地等(被相続人または生計を一にする親族が居住)
- 特定事業用宅地等(被相続人またはその親族が事業に用いていた土地)
- 貸付事業用宅地等(貸付事業に供していた土地)
- 特定同族会社事業用宅地等(同族会社の事業用として使用していた土地)
それぞれの区分ごとに「限度面積」と「減額割合」が設定されています。例えば、特定居住用宅地等は330㎡までで減額割合80%、貸付事業用宅地等は200㎡までで減額割合50%となるケースがあります。
特例適用の要件と注意すべき落とし穴
この特例を適用するためには、取得者(相続人等)や宅地の用途、面積、居住・事業継続要件など細かい要件をすべて満たす必要があります。たとえば、特定居住用宅地等を取得する相続人は、配偶者・同居の親族・別居の「家なき子」などが対象となり、相続開始以前から一定の居住実績を要するなどの条件があります。
また、以下のような点に注意が必要です:
- 相続税の申告自体が必要であること(税額ゼロになる場合でも)
- 二世帯住宅や区分所有登記されている建物の場合、適用対象となる宅地の範囲が限定される可能性がある
- 制度の対象用途に「貸付事業」が除外されるケースがあること
- 最新の税制改正や通達など、制度の細部が変更される可能性があること
まとめ:特例を活用するには計画的な準備が不可欠
小規模宅地等の特例は、相続税対策において極めて有効な制度のひとつです。自宅敷地や事業用地などを引き継ぐ際には、評価額が80%減になる可能性もあります。とはいえ、適用基準が厳格であり、取得対象者、用途、面積、継続要件などひとつでも条件を満たさないと適用が認められないことがあります。
相続が近づいている方、また将来の相続を見据える方は、家族・税理士・司法書士などの専門家とともに、制度の最新動向を確認しながら早めに準備を進めることが、安心できる資産承継を実現する鍵となります。
他の相続・事業承継のブログはこちらをクリックしてください