——「3,000万円の特別控除」を最大活用するポイント
相続した実家が空き家のまま放置されている…。
そんなとき、多くの方に関係するのが 「空き家の3,000万円特別控除」 です。一定の要件を満たせば、空き家を売却する際の譲渡所得から最大3,000万円まで控除でき、税負担を大きく軽減できる可能性がある制度です。
ただし、適用要件は非常に細かく、誤解しやすいポイントも多いため、「使えると思ったのに使えなかった」とならないよう注意が必要です。
本記事では、制度の概要から具体的な対象条件、売却パターン別の要件、申告時の注意点まで、実務で押さえるべきポイントをまとめました。
■ 空き家の「3,000万円特別控除」とは?
相続によって取得した被相続人の自宅(旧耐震基準の戸建て)を売却する際、一定の条件を満たすと 譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度 です。
主な特徴は次のとおりです。
- 相続した空き家の売却に限定された制度
- 戸建てが対象(マンション等の区分所有は対象外)
- 譲渡所得から最大3,000万円控除
- 2024年以降の相続では、相続人が3名以上の場合、控除額が2,000万円となる場合もあり
- 期限は 2029年12月31日までの売却 が対象
制度としては強力ですが、対象要件が複雑なため 「要件を一つでも満たさないと適用不可」 となります。
■ 適用対象となる「空き家」の条件
この制度が使える不動産には、次の条件があります。
① 被相続人が死亡時点で住んでいた家
老人ホーム等に入所していた場合も、一定条件を満たせば対象。
② 昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震の戸建て
マンションやアパート、区分所有は対象外。
③ 相続開始から売却まで、事業・貸付・他人の住居として使っていない
「完全に空き家」または「相続人自身の使用なし」である必要があります。
④ 家屋と敷地をセットで相続している
家屋だけ、または土地だけの相続では対象外。
■ 売却パターン別の要件
空き家特例は、売却方法によって要件が変わります。
● 家屋をそのまま売却する場合
- 旧耐震の家屋の場合は売却前に耐震改修が必要
- もしくは耐震改修済みであること
● 家屋を取り壊して「更地」で売却する場合
- 相続後は事業・貸付・居住に使わず空き家のままであること
- 取り壊し後は、更地を売却するまで同様に未使用であること
● 売却後に耐震改修や除却を行うパターン
2024年1月以降の売却では、
売却後〜翌年2月15日までに除却または耐震改修をすれば適用可能
という特例的な取扱いもあります。
(ただし、売却契約書に一定の記載が必要になるため、事前確認が必須です)
■ 必ず守るべき「期限」
この特例には二つの期限があります。
① 売却期限
2029(令和11)年12月31日までの売却
② 相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却
相続から約3年以内が実質的な猶予期間です。
■ 申告に必要な書類と注意点
空き家特例を使う場合、たとえ税額が 0円でも確定申告は必須 です。
主な必要書類は次のとおりです。
- 被相続人居住用家屋等確認書(自治体が発行)
- 登記事項証明書
- 耐震改修証明書 または 除却証明書
- 売買契約書
- 相続関係書類(戸籍、遺産分割協議書など)
この「確認書」は発行に時間がかかるため、最低でも1〜2か月の余裕を見ておくと安全です。
■ 空き家特例で特に注意すべき “落とし穴”
以下は、実務でよく起きるミスです。
● 家屋を取り壊す前に駐車場として貸した
→ その瞬間に特例が使えなくなります。
● 空き家に相続人が一時的に住んでしまった
→ 「居住の事実」が生じるため対象外に。
● 家屋ではなく土地だけ相続していた
→ この制度では不可。
● 相続人が3名以上で控除額が変わるのに気付かなかった
→ 2024年以降の相続は要チェック。
● 契約日ではなく「引渡し日」が年を跨いで適用外に
→ 期限管理が非常に重要。
■ 特例の利用が特に有効なケース
- 古い実家を相続したが住む予定がない
- 売却益が大きく出そう
- 相続人が複数で、現金での分配方法を取りたい
- 空き家対策の行政手続も同時に進めたい
譲渡所得税は「売却益×約20%」が基本です。
例えば2,000万円の利益が出ると税金は約400万円。
ここに特例を使えば 税額がほぼゼロ になるケースもあります。
■ まとめ
空き家の3,000万円特別控除は、相続した空き家を売却する際の強力な節税制度です。しかし、要件が非常に細かいため、売却前の段階での確認が極めて重要 です。
特に注意すべきは、
- 相続から売却までの使用状況
- 建物の構造(旧耐震)
- 売却方法(家屋付き/更地/耐震改修)
- 必要書類の準備と期限
- 相続人の人数による控除額の違い
これらを誤ると適用できなくなるため、必ず事前チェックを行い、早めに税理士や不動産専門家へ相談することをおすすめします。
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