相続が発生した際、「平等に分けるため」と安易に不動産を共有名義にする選択は、実は将来的なトラブルの引き金になる可能性があります。 特に兄弟姉妹などで共有した結果、数年後に「売りたいのに売れない」といった状況に陥るケースは少なくありません。
今回は、共有名義が抱える構造的なリスクと、それを回避・解消するための具体的な実務ステップについて解説します。
共有不動産のルール|知っておきたい「利用」と「処分」の制限
共有名義とは、一つの不動産を複数人が「持分(割合)」に応じて所有する形態です。 相続時に不動産を共有にすることで、現預金のようにきっちり分けられない財産を、数字上は均等に分割できるという側面があります。
しかし、共有不動産の取り扱いには、民法によって以下のような厳しい制限が設けられています。
- 管理行為(過半数の同意が必要) 賃貸借契約の締結や解除、大規模な修繕工事などは、持分価格の過半数の同意がなければ進めることができません。
- 変更・処分行為(全員の同意が必要) 不動産全体の売却、大規模な増改築、建物の取り壊し、抵当権の設定などは、共有者全員の同意が必須となります。
このように、たとえ一人が「売却したい」と考えても、他の共有者が一人でも反対すれば、原則として不動産全体を動かすことはできません。
共有名義による税務上の特例と注意点
共有名義には、税務面でのメリットが期待できるケースもあります。 例えば、亡くなられた方の居住用財産を売却する際、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例(居住用財産の3,000万円特別控除)があります。
共有名義であれば、共有者それぞれがこの控除枠を利用できるため、結果として世帯全体の税負担を抑えられる可能性があります。 ただし、特例の適用には「居住実態」などの厳格な要件があるため、慎重な判断が求められます。
「動かない不動産」を解決するための実務的な選択肢
すでに共有名義となっている不動産や、今後の分割協議で悩んでいる場合には、以下のような解消方法が検討されます。
- 全員同意による第三者への売却 共有者全員で不動産を一括売却し、売却代金を持分に応じて分ける方法です。最も一般的で、公平な解決につながりやすいといえます。
- 他の共有者への持分売却(単独所有化) 特定の相続人が他の共有者の持分を買い取り、不動産を完全に自分のものにする方法です。買い取る側の資金力や、価格面での合意が必要となります。
- 現物分割(土地の分筆など) 一つの土地を物理的に切り分け、それぞれが単独で所有できるようにする方法です。土地の形状や接道状況により、資産価値に差が出る可能性があるため注意が必要です。
- 共有物分割請求訴訟 話し合いがまとまらない場合、裁判所を通じて解決を図る方法です。競売を命じられたり、賠償金の支払いを命じられたりするなど、司法の判断を仰ぐことになります。
まとめ|将来を見据えた「出口戦略」が重要です
相続時の共有名義は、一見すると公平な解決策に見えますが、次世代に相続が引き継がれるたびに共有者が増え、権利関係が複雑化するリスクをはらんでいます。
2024年4月より相続登記が義務化されていることも踏まえ、安易に共有名義にせず、協議の段階で単独所有や売却を検討することが、将来のトラブル回避に寄与する可能性があります。
共有不動産の扱いに不安がある場合は、個別の状況によって適切な手続きが異なるため、早めに実務に精通した専門家へ相談することをお勧めします。