さまざまな脳の病気により脳の神経細胞の働きが低下し、判断能力の低下が原因で社会生活に支障がある状態を認知症といいます。今回は、認知症を発症したときに生じる財産管理上のトラブルや、今からできる財産管理方法とその注意点などについて説明します。
認知症発症で生じるおそれのある【財産管理上のトラブル】
認知症を発症して判断能力が低下すると、日常生活においても適切な意思決定ができなくなります。
さらに認知症が進行して判断能力が不十分だと判断されると、財産管理においては次のようなトラブルが生じることがあります。
①銀行の口座が凍結される可能性がある
たとえば、銀行のATM を正しく操作できない、窓口で行員に的確な応答ができないなど、金融機関側に認知症により判断能力が不十分だと判断されると、銀行口座が凍結される場合があります。
また、本人の判断能力が不十分であるときには、家族への代理権の授与が取り消される場合があり、極めて不安定な状態となります。
②不動産の売却ができない
判断能力が不十分であるときには、不動産の売却などの契約にかかわる法律行為が取り消される場合があります。
たとえば、自宅を売却して、その資金で老人ホームへ入居する計画を立てていても、売却できないといったことにもなりかねません。
③相続税対策ができなくなる
遺言書の作成や生前贈与などの相続税対策は、判断能力が十分であることが前提とされるため、判断能力が低下するとみずからの意思による対策を行うことは困難になります。
④詐欺被害にあう可能性がある
高齢者を狙った詐欺も多くあり、判断能力が衰えると、詐欺の被害にあうリスクが高くなります。
このように、認知症が発症・進行すると自分で財産管理をすることが困難となります。あらかじめ認知症に備えて対策を講じておくことが大切です。
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~後編~ 明日起こるかもしれない『認知症』 備えるための「財産管理の注意点」