全国の家庭裁判所での遺産分割事件数は長期的には増加傾向にあり、遺産トラブルは他人事ではなくなってきています。今回は、遺産トラブルにつながる主な原因と遺産トラブルを防ぐための対策について紹介します。
遺産トラブルを防ぐためには生前に遺言書などの準備を
前編で記載したような遺産トラブルを防ぐためにできることとして、次のような対策があります。
まず重要なのが、遺言書を作成しておくことです。遺言書がない場合、遺産分割協議で揉めることが多く、相続税の申告期限までに分割できない場合、小規模宅地等の特例など税制上の優遇制度に影響が生じます。
なお、遺言書の作成においては、遺留分(兄弟姉妹以外の法定相続人に法律上相続できる財産の最低保証額で、配偶者・子は法定相続分の1/2、ただし親のみの場合は法定相続分の1/3)の侵害に注意する必要があります。
また、財産の管理に民事信託を利用することも有効です。
民事信託とは、信頼できる親族などを受託者として財産の管理または処分を託す制度のことで、生前から死後にかけての財産管理方法や死後の財産帰属先を決めておくことができます。
認知症などの不安がある場合には、任意後見制度を利用する方法もあります。
十分な判断能力があるうちに、あらかじめ公正証書で任意後見人と任意後見契約を締結し、将来委任する事務(生活、療養看護および財産管理に関する事務)の内容を定めておくと、判断能力が衰えた後、任意後見人にこれらの事務を代理してもらうことができます。
遺産分割事件は年々増加しており、遺産の金額が5,000万円以下の事件が全体の3/4以上を占めることからも、遺産トラブルは身近なもので、一般的な家庭でも発生する可能性は十分あるといえます。
自分が当事者になるかもしれませんので、有事に備えておくことをおすすめします。もし不安があれば、法律や相続税などに詳しい専門家に相談してみましょう。
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~前編~ 税理士が見てきた遺産トラブル「いつのまにか自分も当事者に?あなたにも起こる相続トラブル」