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相続税は不動産で払える?「物納制度」の仕組みと注意点を解説

相続税は不動産で払える?「物納制度」の仕組みと注意点を解説

2025.05.02

相続・事業承継

相続税の納税方法として一般的なのは現金一括納付ですが、相続財産の多くが不動産などの資産で、現金での支払いが難しい場合もあります。そんなときに選択肢となるのが、「物納制度」です。本記事では、相続税を不動産で納税する物納制度の基本、メリット・デメリット、手続き方法や注意点について詳しく解説します。


物納とは?相続税を不動産などで納める制度

**物納(ぶつのう)**とは、相続税を現金ではなく、不動産や株式などの財産で納付できる制度です。相続税は原則として金銭で納める必要がありますが、延納(分割払い)を利用しても支払いが困難な場合に限り、一定の条件のもと物納が認められます。

物納が利用される典型的なケースは、相続財産のほとんどが土地や建物などの不動産で構成され、現金がほとんどない場合です。こうしたケースでは、相続税を現金で支払う資金を用意するのが難しいため、物納が現実的な選択肢となります。


物納できる財産と優先順位

物納に充てることができる財産には制限があります。以下のような財産が対象です:

 ・日本国内にある土地

 ・建物上場株式や非上場株式

 ・国債や地方債

また、財産の種類ごとに物納に充てる優先順位も決められており、原則として不動産が最優先です。なお、物納に適さないと判断された財産は却下されることもあるため、注意が必要です。


物納制度のメリットとデメリット

メリット:

  • 現金が手元になくても相続税の納付が可能
  • 譲渡所得税がかからない
  • 財産の現金化による手間やコストが不要

デメリット:

  • 財産の評価額が市場価格より低くなる可能性がある
  • 手続きが複雑で時間がかかる
  • 利子税が発生することがある
  • 審査の結果、却下されるリスクもある

物納の申請手続きと流れ

物納を希望する場合、以下のステップで手続きを進めます:

1.納税額を確認し、物納対象の財産を選定

2.物納申請書や金銭納付が困難な理由書などを準備

3.原則として**相続税の納付期限(被相続人の死亡から10ヶ月以内)**までに、税務署へ提出

4.税務署・財務局による審査および現地調査

5.物納が認められた場合、物納許可通知書が送付される

6.所有権移転の手続き後、「物納財産収納済証書」が発行される

    ※期限内に申請が難しい場合は、提出期限の延長も可能(最長1年)


    物納の利用件数は減少傾向、その理由とは?

    近年、物納の利用は減少しています。2020年以降は年間数十件程度と少数です。背景には以下のような要因があります:

    • 2006年の相続税法改正で要件が厳格化
    • 不動産市場の活性化により売却が容易に
    • 分割納税が可能な延納制度の普及

    まとめ:物納は相続税対策のひとつ。まずは専門家に相談を

    物納は、相続税の納税資金が不足している場合の有力な選択肢です。しかし、審査基準が厳しく手続きも煩雑なため、延納制度や不動産の売却など、他の方法と比較して検討することが大切です。状況に応じた最適な対応を取るためにも、税理士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。

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