不動産は本来、価値ある資産として相続されるものですが、管理コストや売却困難などの理由から「負動産(ふどうさん)」と呼ばれる不動産が問題視されています。今回は、税理士の立場から、負動産が相続に与える影響やリスク、そして相続前に取るべき具体的な対策について解説します。
「負動産」とは?相続で問題になる不動産の特徴
次のような不動産は、相続後に大きな負担となる可能性があります:
- 地方にある空き家や利用予定のない実家
- 再建築不可の古い建物
- 相続後の活用が困難な農地や山林
- 市場価値が低く売却できない土地・建物
これらは保有しているだけで固定資産税や管理費が継続的に発生し、収益化や売却も難しいことから「負の遺産」となりかねません。
相続によって生じる負担とトラブルリスク
● 税金や維持費の負担
不動産を相続すると、次のような費用が発生します:
- 相続税・登録免許税
- 固定資産税・都市計画税(使用していなくても課税されます)
- 空き家に認定された場合、住宅用地特例の適用除外により税額が増加
● 管理義務と損害賠償リスク
建物の倒壊や不法投棄、火災などが発生すれば、**所有者としての責任(損害賠償リスク)**が問われる場合も。
● 遺産分割トラブル
相続人の誰も引き取りたがらない不動産があると、遺産分割協議が難航し、相続全体が停滞する恐れがあります。
負動産のリスクを回避するための対策
1. 資産棚卸と事前整理
まずは保有する不動産の評価額・利用状況・維持コストを明確にしましょう。不動産鑑定士や税理士、不動産業者との連携が有効です。
2. 不要不動産の処分検討
- 売却(可能であれば早期に)
- 寄付や譲渡(ただし、自治体や団体によっては受け入れ不可)
- 遺言書に処分方法を明記し、遺言執行者を指定
3. 相続開始後の対応策
負債が多いと判断した場合には、以下の方法が選択肢になります:
- 相続放棄:一切の財産を引き継がない
- 限定承認:プラスの財産を上限に、マイナスの負債を引き継ぐ
※どちらも、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で申述が必要です。
税理士からのアドバイス|早めの対策が最良の節税策
相続は「資産を引き継ぐ」だけでなく、負債や将来のリスクも含めて承継する行為です。
特に不動産は流動性が低く、放置することで家族に迷惑をかける結果になるケースも多く見受けられます。
早期の段階で家族と情報を共有し、資産の状況を正しく把握すること。
そして、必要に応じて遺言書の作成や不動産の整理、相続税対策を進めておくことが、将来の負担軽減につながります。
▶まとめ:相続財産に「負動産」があるかもしれない…と思ったら
- 不動産が負担になる可能性があるなら、相続前に整理・売却・遺言の活用を
- 相続後の対応も含め、3ヶ月以内の選択が重要
- 家族で情報共有し、専門家(税理士・司法書士・不動産業者)に早めに相談を
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