大学非常勤講師も務める税理士が、開業、経営指導、相続に対応します

NEWSお知らせ

意外と忘れている相続登記の義務化!不動産を相続したら知っておきたい手続きと注意点

意外と忘れている相続登記の義務化!不動産を相続したら知っておきたい手続きと注意点

2025.08.08

相続・事業承継

2024年4月より、相続や遺贈によって取得した不動産について、相続登記の申請が法律で義務化されています
これまでは任意だった相続登記ですが、現在は一定期間内に申請を行わないと過料の対象となるなど、不動産相続における重要な手続きとして位置付けられています。

今回は、相続登記義務化の背景や具体的な内容、申請の流れや注意点について、わかりやすく解説します。


所有者不明土地が深刻化―なぜ相続登記が義務化されたのか?

相続登記とは、土地や建物などの不動産の所有者が亡くなった際に、登記簿上の名義を相続人に変更する手続きのことを指します。

従来はこの手続きが任意だったため、名義変更されないまま放置された不動産が全国に多数存在していました。
この結果、所有者不明の土地が増加し、公共事業の遅れや災害復旧の妨げ、空き家問題の深刻化といった社会的な課題に発展しています。

実際、所有者が分からない土地の面積を合計すると、九州本島を上回る規模に達しているとされています。
こうした背景を受け、2024年4月から相続登記の義務化がスタートしました。


登記を怠ると過料も!新制度のポイントと罰則

現在の制度では、相続や遺贈によって不動産を取得した人は、取得を知った日から3年以内に登記申請を行うことが法律で定められています。
このルールに違反し、正当な理由がないまま申請を怠った場合は「10万円以下の過料」が科される可能性があります。

また、遺産分割協議がまとまっていない場合には、ひとまず法定相続分に基づく登記を先に済ませることも可能です。

さらに、「相続人申告登記制度」という簡易な制度も設けられており、これを活用すればとりあえず義務を果たしたと見なされる扱いになります。ただし、遺産分割が成立した場合には、3年以内に再度登記をし直す必要がある点に注意が必要です。


過去の相続も対象!2024年4月以前の不動産にも義務が及ぶ

この義務化制度は、2024年4月より前に発生した相続についても適用されます。
具体的には、相続登記が未了の不動産がある場合、2027年3月31日までに登記を完了させる必要があります(3年間の猶予期間)。

放置しておくと以下のようなリスクが生じます:

  • 登記違反による過料の発生
  • 利用や売却ができないなどの不動産活用上の支障
  • 他の相続人や第三者との権利関係の複雑化

今後のトラブルを防ぐためにも、早期の登記手続きが重要です。


相続登記をスムーズに進めるために今からできること

相続登記をスムーズに行うためには、以下のような事前準備が有効です:

  • 親や祖父母の名義の不動産がどこにあるかを確認しておく
  • 戸籍謄本、遺言書、登記情報などを収集・整理しておく
  • 相続の発生に備えて、家族で事前に話し合いをしておく
  • 不安があれば、司法書士や税理士など専門家に相談する

とくに、共有名義の不動産や相続人が多いケースでは、登記までに時間がかかる可能性があるため、早めの行動がカギとなります。


不要な不動産だけの場合や負債が多い場合は「相続放棄」も検討

相続財産の中に、活用できない山林や空き家しかないような場合や、借金の方が多い可能性がある場合には、相続放棄限定承認といった選択肢もあります。

  • 相続放棄:一切の財産を相続せず、相続人としての立場を放棄する
  • 限定承認:相続した財産の範囲内で、負債なども引き受ける方法

いずれも、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要がありますので、タイミングには注意が必要です。


まとめ:不動産の相続は「登記して完了」の時代へ

相続登記の義務化により、不動産の名義変更は避けて通れない手続きとなりました。
放置すると過料の対象となるだけでなく、不動産の売却・活用の妨げや、将来的な相続トラブルの火種にもなりかねません。

「不動産を相続したら、登記をして完了させる」
この意識が、これからの相続対策において欠かせないものになっています。家族や専門家と連携しながら、早めに準備と対応を進めておくことが、安心・安全な相続の第一歩です。

相続・事業承継の他のブログはこちらをクリック

pagetop